※ネタバレを含みます
邦画を7年避けてきた私が、なぜか「国宝」に吸い寄せられた理由
正直に言うと、私は普段ほとんど邦画を観ません。理由は単純で、クオリティの低さ、迫力不足、独特の演技の“臭さ”がどうしても苦手…という先入観を勝手に持っているからです(怒られそう)。
前回邦画を劇場で観たのは、竹内涼真をどうしても映画館で見たいという友達に誘われた「センセイ君主」。その時以来7年、完全に洋画一択で生きてきました。
そんな私が、なぜか「国宝」だけは“前情報一切なし”で、しかも予告すら見ずに映画館へ向かっていました。YouTubeの広告も観ていないのに、「これは観たほうがいい」と直感が言ったんです。今思えば、その勘は久々に大当たりでした。
6月6日公開と見て「息子の誕生日だ」としか思わなかったあの日。まさかその日が、邦画への苦手意識をひっくり返される日になるとは思いもしませんでした。

▼歴史的ヒット
実写邦画100億突破は22年ぶりの快挙
ちなみに、映画『国宝』は 実写邦画で100億突破が22年ぶり の大記録。公式サイトによると、歌舞伎という伝統芸能を題材にした映画がここまで一般層に刺さるのは「極めて異例」とのこと。アニメやファンタジー作品が興行収入を占める中で、伝統芸能を真正面から描いた作品が歴史的ヒット。それだけで、この映画がただものではないと伝わります。
歌舞伎知識ゼロの私でも理解できた。「なぜ心を奪われるのか」
歌舞伎には一切触れてこなかった私でも、この映画を観れば「なぜ人は歌舞伎に魅了されるのか」その理由が腑に落ちました。
最初の雪の舞台、凛とした空気、指先まで魂を込めた所作。映像の美しさに息を飲み、気づけば胸が締め付けられて、涙が静かに滲んでいました。号泣ではないんです。でも、心の奥をグッとつかまれる涙が何度も流れる。そんな映画でした。
【追記】IMAXで2回目観てきた。映像は正直「劇場次第」だったけど、音が別物で沼った話はこちら
▼キャスト:映画の心臓
私は邦画俳優をほとんど知らないので、渡辺謙さんくらいしか演技を観たことがありませんでした。しかし、それでも感じたのは…
少年時代の二人の演技が圧巻。作品の核心を支えていた。
- 少年時代の俊介:越山敬達(16歳)
- 少年時代の喜久雄:黒川想矢(16歳)
黒川くんの公式HPキャスト紹介にはこうあります:
「歌舞伎を穢すことなく、少年喜久雄を演じきることへの重みを痛感し、押し潰されそうな日々が続きました。」
この一文に、彼が背負った覚悟の全てが詰まっています。実際の演技は、ただの子役という枠では説明できません。幼さを残しつつ、背負ってきた闇や狂気の気配まで宿す表情——あれは天性。この二人が序盤で物語を一気に引き込んだおかげで、歌舞伎初心者の私でも深く感情移入できました。
▼血筋と才能、そして嫉妬。
私の性癖に刺さる人間関係の地獄
「国宝」の物語は、歌舞伎の厳しさ以上に、人間関係の地獄が本当に胸を抉ります。
・血筋である俊介よりも、部屋子の喜久雄が圧倒的に才能がある
・その才能ゆえに3代目に選ばれる
・俊介はそれを認めながらも苦しみ、壊れていく
・俊介の幼馴染(高畑充希)と喜久雄は子どもまで授かる
もう…刺青シーン含めて性癖にブッ刺さりすぎてヤバい。俊介側が背負っているものを考えると、彼の道を外す行動すら理解できてしまうのもまたしんどい。この関係性の描き方が、私の中のドロドロした感情を全部ひっくり返しました。
▼一番泣いた瞬間
「俺には守ってくれる血がない」
喜久雄が代役を務める前、震えながら俊介に「俺には守ってくれる血がないねん」と泣きつくシーン。声、息遣い、震え、崩れ落ちる目。あの瞬間の喜久雄は、誰よりも弱く、誰よりも美しかった。俊介が涙を堪えている表情は、反則。あそこで涙が止まらなくなりました。
▼渡辺謙の“最後の舞台”
えげつないレベルで心を削られた
半二郎(渡辺謙)が死を迎えるシーンは、衝撃的。舞台に取り憑かれた男の未練と狂気を、あそこまで生々しく美しく演じ切れるのは彼しかいません。俊介の名を何度も呼ぶあの声。喜久雄の顔。すべてが胸を引き裂きます。
そこから喜久雄が壊れていくあの屋上シーン。笑いながら踊る姿の“綺麗さ”は、完全に狂気そのもの。あれは呪いです。美の呪い。
「悪魔との契約」舞台に取り憑かれるということ
劇中でも語られる 「悪魔との契約」 という言葉。歌舞伎の舞台には“怪物”がいて、役者はその怪物と契約し、命と精神を削りながら舞台に立つ。その概念が、映画全体を貫いていました。ものすごく生々しくて現実味があって、あれはホラーです。
▼「死ぬ覚悟はあるのか」
曽根崎心中の稽古シーンで何度も震えた。
歌舞伎の言葉は聞き取れないと思っていた私ですが、曽根崎心中の稽古シーンの「死ぬ覚悟はあるのか」という問い。劇中で、何度も何度も何度も出てきます。同じセリフなのに、言い方、トーン、表情、指先、背中——何度も重ねられるたびに、意味が深まっていく。その瞬間、歌舞伎は全身で語る芸術なのだと理解しました。今でも耳に残っています。
▼結論
『国宝』は、歌舞伎初心者の私でさえ心を奪われました。伝統芸能の歴史、血筋の呪い、才能の残酷さ、舞台の美しさ。そしてキャスト陣の覚悟に飲み込まれ、魂を揺さぶられました。死ぬ前に、一度は歌舞伎を生で観たい。そう強く思わせてくれた映画です。
追記
そういえば!原作小説の表紙が、今は映画の国宝バージョンになってるとか。私はIMAX鑑賞後に購入しました。ぜひ、国宝に惹かれた方は読んでみてください。映画の内容よりも色々と濃い部分があって私は楽しめました。





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